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パン

低炭水化物ダイエットでは、GI値の高い食品を摂取しないという基本原則があるようです。

GI値が高い食品ほど血糖値が急激に上昇し、インスリンが大量に分泌されるためです。

インスリンが大量に分泌されると摂取した炭水化物が脂肪に変換され、脂肪細胞に蓄えられていきます。

これが肥満のメカニズムです。

だからGI値の高い食品を控えることで中性脂肪の生成を抑制しようというのが、このダイエットの目的です。

では、GI値が低い食品だけを食べていれば、本当にダイエットができるのでしょうか?

実はGI値について解説しているサイトのほとんどが、誤解していることがあります。

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GI値の本当の意味

GI値はグリセミック指数(Glycemic index)のことであり、食品ごとの血糖値の上昇度合いを表す数値であると言わます。

多くの日本のウェブサイトでは、「食品が体内でブドウ糖に分解され血糖値が上昇するスピードを表す指数」と説明しています。(参照

確かに血糖値の上昇スピードが速ければ、GI値は大きくなる傾向があります。

しかし、血糖値が緩やかに上昇し、緩やかに下降してもGI値が高くなることもありうるのです。

GI値の定義

GI値は1981年にカナダのトロント大学のでデヴィッドJ.ジェンキンス博士らが提唱したのが始まりです。

食品に含まれる炭水化物50gを摂取したあと、二時間以内の血糖値の時間変化をグラフに描き、その曲線が描く面積を求めます。

その面積と、基準試料の面積の割合でその食品のGI値を算出します。

GI値の求め方
http://www.glycemicindex.com/about.php

例えば上の図のような場合、HIGH GIが基準試料でLOW GIが測定試料だとすると、ピンクの面積をオレンジの面積で割った値に100を掛けたものがGI値になります。

 

式で表すと以下のようになります。

GI値 = {(食品摂取後の血糖値上昇曲線の面積)/(基準試料摂取後の血糖値上昇曲線の面積)}× 100

 

例えば、白米のGI値は88、玄米は55であるため、白米より玄米の方がゆっくりと血糖値が上昇する、ということができます。

しかし、上のグラフにもあるとおり、血糖値がゆっくりと上昇したとしても、その時間が長ければそれだけ面積も大きくなり、GI値は高くなることがあります。

つまり、GI値は糖の吸収速度だけでなく、もとの血糖値に戻るまでの時間も考慮された数値であると言えます。

また、基準試料は一般的にはブドウ糖が用いられますが、欧米では精製小麦粉で作られたパン、日本では白米が採用されることがあり、基準試料の選択によって値は変化するので、データを比較する時には基準試料が何であるのかを気をつけなければなりません。

GI値の測定方法

本来のGI値の測定方法は、食品に含まれる炭水化物50gを摂取したときの血糖値上昇曲線の面積で計算されることになっています。

そのため、例えばうどんのGI値を測定するためには、うどんを約88g食べた後の血糖値上昇曲線を調べる必要があります。なぜならうどんには、炭水化物以外の成分も含まれているからです。

蕎麦なら約70g、スイカなら660gを食べた後の血糖値上昇曲線を調べる必要があります。

その食品に含まれる炭水化物量から実際に50gが摂取できる量を計算し、その分だけを摂取して測定しなければ比較ができません。

「100g当たり」と明記されたGI値の表がいろんなサイトで見受けられますが、このような測定値は真のGI値ではありません。

豚もも肉や鶏ささみのGI値が44??

GI値の正しい定義を理解したうえで、ウェブサイトで紹介されている食品のGI値を見てみますと、ちょっとおかしいことに気づきます。

例えばこちらのサイトでは、豚もも肉や鶏ささ身のGI値が44となっています。

肉のGI値について
http://www.drrk.net/gi.html

豚もも肉に含まれる炭水化物量は100gあたり0.2gであるため、50gを摂取するためには25kgの豚もも肉を食べなければなりません。

そもそも二時間以内に25kgの豚もも肉を食べれるような人なんておそらくいないでしょう。

 

このような炭水化物をほとんど含まない食品のGI値は本来測定が不可能なのです。

例えば海外のこちらのサイトでの分類項目においても、Very Low GIの項目に「No established GI value and an available carbohydrate of less than 5 grams」ときちんと書いてあります。

つまり、炭水化物が5g以下ではGI値は測定不能であり、測定不能な食物は自動的に超低GI食品に分類されるべきなのです。

 

したがって、肉のGI値が記載されているようなサイトや、基準試料(ブドウ糖なのか白米なのかパンなのか)を明記していないGI値は参考にしてはいけません。

GI値が低い食品だけを食べてもダイエットができない理由

GI値が低い食品はインスリンの分泌を抑制し、糖が脂肪酸に変換されるのを抑制します。

したがって、GI値の高い食品よりもGI値の低い食品を選択して摂取していればダイエットできるという考え方があります。

 

しかし、これは果たして真実なのでしょうか??

 

例えば、りんごのGI値は34で、にんじんのGI値は79とかなり高めです。

この数字だけを見れば、にんじんよりもりんごの方がGI値が低いので、りんごの方がダイエットに向いているといえます。(確かに以前、りんごダイエットなんていうものもありました)

果物のGI値はなぜ低いのか?

実際の糖質量で比較すると、りんご100gあたりの糖質量は13.1gであるのに、にんじんの100gあたりの糖質量は6gです。

このことは果物全般に言えることですが、含まれる糖質量に比較して、果物はGI値が低い傾向があります。

果物のGI値はなぜ低いのか
http://www.drrk.net/gi.html

これはなぜでしょうか?

 

これは果物に多く含まれている果糖(フルクトース)がブドウ糖(グルコース)と代謝経路が異なっているためです。

果糖が血糖値を上昇させないのは、体内に取り込まれた果糖のうち90%はブドウ糖に変換されずに、そのまま肝臓で代謝されるからです。

つまり果糖を摂取しても、そのうち10%分しかブドウ糖に変換されないため、GI値が低くなるのです。

決して、果糖自体の吸収速度が遅いというわけではありません。

 

直接肝臓に流れ込んだ果糖は、実はインスリンがブドウ糖を分解するよりも早く解糖されていきます。

ピルビン酸に分解されてTCA回路で代謝されたり、あるいは、糖新生によってグルコースに変換されたりします。

しかし肝臓での解糖作業が追いつかなければ、残りの果糖は中性脂肪に変換されます。

肝臓がグリコーゲンを貯蓄できる能力はそれほど高くないため、中性脂肪の合成はブドウ糖より早く亢進していきます。

 

GI値だけを見れば果糖(果物)よりもブドウ糖(白米やパン)の方が血糖値を早く上昇させるため、一見すると果糖の方がダイエットに向いているように見えますが、実際に中性脂肪に変換される速度は、インスリンがブドウ糖を変換するよりも果糖が肝臓で変換される速度の方が圧倒的に早いのです。

つまり、GI値が低い食品でも、含まれている糖質の種類によって、中性脂肪に変換される経路が異なるり、脂肪酸に変換される速度も変わるのです。

これは、GI値だけでは比較することができません。

 

りんごとにんじんの例では、GI値はにんじんの方が大きいですが、糖質量としてはりんごがにんじんの二倍です。

この場合は当然りんごの方が変換される中性脂肪は多くなります。

 

結果的に、GI値のみで食品を選択してもそれがダイエットにつながるとは言えないのです。

食べ合わせや食べる順番によってもGI値は変化する

GI値のもうひとつ大きな問題点は、GI値の測定はすべてその食品単品を食べた場合の血糖値の挙動から計算されていることです。

例えば、にんじんのGI値を測定する際には、にんじんを生の状態で食べて測定します。

同様に、白米を測定するときには、白米のみを食べて測定します。

 

もしにんじんを油で炒めたり、煮たり、蒸したり、塩で味付けをしたりすれば、GI値は変化します。

白米についてもバターライスにして食べると血糖値の上昇が緩やかになることが知られています。

また、冷ご飯になるだけでも、血糖値の上昇が緩やかになるとも言われています。

 

さらに、食べる順序によっても血糖値の曲線が変化することがわかっています。

例えば、白米から先に食べ始めると血糖値は急激に上昇しますが、タンパク質や脂質から食べて最後に白米を摂取すると、血糖値の上昇は緩やかになると言われます。

 

様々な食べ合わせによるGI値の測定については、こちらのサイトを参考にしてみてください。

つまり、GI値というのは全て実験室でのデータであり、私たちが普段食べている料理とは異なっている場合がほとんどなのです。

まとめ

GI値の定義について説明し、ネットや情報媒体で広まっている様々な誤解について整理しました。

 

GI値は糖質量と比例しないことや、特にそれが果糖の場合に顕著であることを示し、その理由を解説しました。

そして、GI値が低いからといってダイエットにつながるとは言えないということを明らかにしました。

 

しかし、GI値が全く意味がないという意味ではありません。

血糖値の上昇を抑えることは、脂肪細胞を増やさないようにすること以外にも、生活習慣病やその他様々な疾患の予防につながります。

その際、GI値を見ながら食品を選択することは有意であるといえます。

ただし、GI値自体は実験室レベルの数値であること、また食べ合わせや食べる順序によってもGI値は変わりうることから、あくまで参考値として目安にする程度にとどめておくことが重要です。

私たちはGI値の数字をただ信じるのだけではなく、データの曖昧さを理解したうえでうまく利用していく必要があります。